休診日:日曜・祝日

     水曜日と土曜日は午前のみです

京都市北区西賀茂榿ノ木町31−2
院長 諸岡 憲(もろおか けん)
  1. 2011年秋大流行している肺炎はマイコプラズマ肺炎? ―またしても起きたマスコミの誤報道とそれを安易に追従・容認して迷走する不勉強な医師たちー
 

2011年秋大流行している肺炎はマイコプラズマ肺炎?
―またしても起きたマスコミの誤報道とそれを安易に追従・容認して迷走する不勉強な医師たちー

2011年8月頃から、幼児に限らず、学童から成人までの全ての年齢層の者を巻き込む肺炎(または気管支炎)が大流行しています。そして、この肺炎の多くに気管支喘息の症状が合併しています。

この肺炎の原因は一体何なのでしょうか?

先日、NHKがこの肺炎の問題を取り上げ、特集番組を放送しました。私は僭越ながら見ておりませんが(時間の無駄なので)、後日その報道内容を入手し、一瞥して唖然とすると共に、「ああ、またしても」という感想を抱かざるを得ませんでした。その報道の中で、彼らは、「原因はマイコプラズマ感染症またはRS ウィルス感染症」と勝ち誇ったように断定していた様です。

 

 

しかし、これは重大な見落としを含む余りにも拙速な判断に基づく完全な事実誤認、即ち、誤りです。

 

 以下に、何故これが誤りなのかを検証してみましょう。

 

 その前に、まずマイコプラズマ肺炎について、どのような疾患なのかを述べておきます。

マイコプラズマ肺炎は、小児の呼吸器感染症の中でも重要なものの一つで、以前から、オリンピック開催年に必ず流行する傾向があるため、「オリンピック肺炎」と言う、あだ名が付いていました

1992年以降、この傾向が崩れ、ほぼ毎年小流行するようになりましたが(その理由は大体の推察は出来ていますが、本題から外れるので敢えて述べません)、2008年の北京オリンピックの時は、アジアでのオリンピック開催のため、やはり、大流行しました(この時は、彼のNHKも含めて何故かマスコミは沈黙していましたが)

 マイコプラズマは分類上は細菌に属するのですが、他の細菌ならば存在する細胞壁を持たず、その大きさも一般細菌の1/5程度しか有りません。感染の成立は、感染者からの飛沫感染により、食道と気管支の分岐部である喉頭蓋よりも更に気管支側奥の細胞上皮に付着して感染が始まります。但し、この部位の細胞内にマイコプラズマが直接侵入して炎症反応を起こす事はありません(*脚注)。従って、咽頭扁桃炎のように、咽頭痛や嗄声は起こらず、視診上でも、咽頭発赤は認めません感染成立後、初発症状は乾性咳嗽であり、進行増悪すれば、湿性咳嗽に変化していきます。これは、当初は肺胞部で病変が始まるため、喀痰の排出がないためであり、病変がその上位の気管支に及ぶと喀痰排出が著明になるからだと病態生理学的に考えられています。また、さらに、特徴的なのは、上気道炎(気管支より上位での炎症。所謂かぜ症候群)ではないため、鼻汁・鼻閉は一切認めません(もし、この症状を認めたら、マイコプラズマ肺炎ではないか、もしくは、他のウィルスとマイコプラズマ肺炎との混合感染症と考えるべきです)。無治療の場合、平均11日発熱が続くことが認められています。好発年齢は、4歳から12歳程度の幼児〜学童期であり、特に、5〜8歳の年齢層に集中して発症が認められています。後述しますが、マイコプラズマ感染症は顕性(症状が出ること)・不顕性にかかわらず一生の間に繰り返し感染します。そして、一度強く顕性感染した後は、2回以上の強い顕性感染、即ち、肺炎に至ることは皆無と言っても差し支え有りません。このことは、12歳を超えた途端に発症率が急激に低下し、成人での顕性感染率、ましてや、肺炎に至る発症率は高々1%程度に過ぎないことが実証されている事からも明らかです。

 治療は、マクロライド系抗生剤やニューキノロン系抗生剤に良く反応し、これらの投薬により速やかに症状改善・治癒に至ります

*脚注: マイコプラズマ感染症の成立は、他の殆どの細菌ウィルス・感染症の様に病原体が宿主(この場合ヒト)の細胞や組織に侵入して増殖した結果、障害をもたらし発病するのではなく、病原体に対しての宿主の過剰免疫応答によるものであると言うことが最近明らかとなりました。このことは、即ち、マイコプラズマが例え抗生剤に反応しにくくなるものに変異(いわゆる耐性化)したとしても、この耐性菌による感染後の発病も非耐性菌と同じ発症転機、即ち、宿主の過剰免疫応答による発病であることに変わりはないと言うことを示しています。言い換えれば、マイコプラズマの耐性化・非耐性化は発病とは無関係であるし、ましてや、抗生剤が病状の改善に供さない等の事象とも全く無関係であると言うことです。後述しますが、この宿主の過剰免疫応答による発病をもたらす病原体は、他にも幾つも存在することが明らかになってきています。

 


 

では、以上のマイコプラズマ肺炎の知見をしっかりと念頭に置いた上で、彼らがマイコプラズマ肺炎と断定した「証拠」が如何に奇異かつ脆弱であるかを論証して行きます(RSウィルス感染症については後述)


1.:現在流行中の肺炎患者に対して行った血液検査の結果からマイコプラズマ肺炎と診断された

 

 彼らの「証拠」は、この1点のみです。この「証拠」の出所は、厚労省が指定した定点観測指定機関に当たる日本全国の病院・診療所から報告された「感染症動向調査」に基づいています。ここからの2011年8月以降の報告によれば、マイコプラズマ肺炎が急増しているとされているのです。これは、一見事実のように見なされがちです。ところが、これが実は拙速な結論を生み出す基なのです。

 当ホームページの「感染症について」をご参照頂きたいのですが、「厚労省が指定した定点観測指定機関からの「感染症動向調査」報告」には、大きな落とし穴があり、科学的根拠が曖昧または稀薄でも、それを更に検証する手段が無い場合、例え報告する医師達も疑問に思いつつも、報告義務があるため、暫定的診断をあたかも確定診断のように、主観に基づいて報告している場合があるのです(事実、厚労省が設定した診断届け出基準には致命的な不備・欠陥があり、後述しますが、生化学的にはマイコプラズマ肺炎と診断し得ない数値でも診断可能となっています)。この信頼性の怪しい報告を受けた厚労省の事務官達は、勿論、医学的知識は皆無のため、報告書に記載された病名を機械的に集計し、何の仮借もせずに発表しているという次第です。

 この様な報告に、一体どれくらいの信頼性・信憑性があるというのでしょうか?

 にも拘わらず、マスコミ諸氏を含めた一般大衆のみならず、この発表を何の疑念も抱かずに鵜呑みにして信用する浅はかな臨床医家(医師)達が、残念ながら日本には数多く存在します。

 ここで、彼の浅はかな臨床医家はこう反論してくるでしょう。「検査でマイコプラズマ抗体が陽性に出ているから、マイコプラズマ肺炎だ」と。

 この様な考えこそが浅はかだと言わざるを得ません。何故ならば、上記の集計態様に加えて、現在、日本で施行されている検査法自体にも相当な問題点が内在し、その結果に絶対的信頼性を付与することは不可能だからです

 マイコプラズマ抗体には、他の感染症と同様、IgM抗体IgG抗体の2種類の抗体の存在に加え、IgA抗体も存在し、いずれも感染した後に血清中に出現してきます。麻疹、風疹、あるいは、水痘の様なウィルス感染症の場合、健常人において、血清IgM抗体が存在する期間は、病初期から回復後数ヶ月間の範囲に限定されており、その後はIgG抗体のみとなることがよく知られています。従って、IgM抗体を検出することは、通常急性期(即ち、その病気に罹患した直後)診断としての診断的意義が大きいのです。この知見に基づき、マイコプラズマIgM抗体を検出する迅速検査法(イムノカード法、IC法。定性であり、定量法ではありません)が、21世紀初頭に考案・開発され、近年日本で爆発的に普及しました。

 ところが、その後、この検査法には致命的な欠点がある事が明らかとなったのです。

 マイコプラズマは顕性(症状が出ること)・不顕性にかかわらず一生の間に繰り返し感染し、その都度IgM抗体が産生されているのです(麻疹等と大きく異なる点)。さらには、IgM抗体が一旦産生されると、少なくとも1年程度か、あるいは、それ以上の期間血中に存在していることも明らかになっています

従って、IC法で例え陽性反応が認められても、それが現在の症状を反映しているとは限らないのです。

 ましてや、元々IC法は定性法なので、量的に判断することも出来ません

 換言すれば、この検査で陽性反応が検出されたとしても、それは過去に感染したマイコプラズマ感染症を見ているに過ぎないのかもしれず、現在の症状がマイコプラズマ肺炎によるものであると言う診断根拠にはなり得ないのです。このことは、日本でのイムノカード法キットを輸入販売しているTFB社ですら認めている事実であり、キットの添付文書に、「本法で陽性反応を認めたとしても、マイコプラズマ肺炎の確定診断とは言えないことに注意して下さい。確定診断のためには、その他の症状経過、他の臨床所見、あるいは、他の検査所見とを併せて総合的に判断して下さい」と、記述してあることからも明らかです。この添付文書を浅はかな臨床医家たちはまさか読んでいないのでしょうか(どうしてその様なずさんな医療が平気で出来るのでしょうか)?

 以上から、このIC法キットの信頼性はよくて50%程度と考えて差し支え有りません。

数学的に言えば、IC法によるIgM抗体の検出は、マイコプラズマ感染症の必要条件ではあるが、十分条件にはなり得ないと言うことなのです。

 このIC法を開発したのは、ドイツのバイオテクノロジー関連の会社ですが、とうの昔に、欧米では、上記の理由により、IC法の信頼性は著しく低下してしまいました。従って、現在欧米では、ELISA法(IgM抗体、IgG抗体、および、IgA抗体の3つの抗体を各々単独かつ高精度に検出可能な測定法。しかもこちらは定量法)がマイコプラズマ診断の標準法として既に定着しています。

 マイコプラズマの抗体測定にはもう一つ古くから間接赤血球凝集反応(抗体により赤血球が凝集すること)を利用して改良を加えた高比重微粒子凝集法(PA法)という検査法があり、こちらが、現在の大多数の日本の病院における、マイコプラズマ肺炎診断の標準法となっています。PA法は半定量検査であり、倍数で表現されます。測定可能な最低の倍数は40倍であり、2005年に成田らにより行われた健常成人に対しての調査により、640倍以上の抗体保有者を認めなかったことが報告されています。このことから、PA法により640倍以上の数値結果を得られた場合、感染急性期に近い状態だと成田らは主張しています(しかしながら、この集計の母集団の数は124例とそれほど多くないことと、以下に述べるように非特異的反応の存在の両者を考慮すると、1280倍以上の数値がなければ、統計学的に有意であるとは決して断定できません)。更には、この検査においても、マイコプラズマ抗体以外の非特異的抗体を検出している可能性が否定できず、確定診断には、ペア血清法(およそ2週間以上の間隔を置いて2回測定する検査法)の施行が不可欠となってくるのです。

 今回の「肺炎」に関して、その根拠とされる検査の詳細について、勿論、素人のNHKからは何も言及がありませんが、先述の厚労省の設定した診断届け出基準では、IC法による陽性判定結果だけでも、マイコプラズマ肺炎と断定でき得る様になっており、勿論、現在の集計のかなりの部分をIC法による結果が占めています。集計結果のその他は殆ど全てPA法、しかも、単独検査の結果か、もしくは、ペア血清法の結果によるもの(厚労省基準は、どちらで判定しても構わないという甘い基準になっています)が殆どですが、ペア血清法の結果だとしても、驚くべき事に、たった320倍程度の数値上昇でマイコプラズマ肺炎と診断して構わないことになっているのです(上述の通り、1280倍以上の変動を満たさなければ、統計的に有意ではない、即ち、マイコプラズマ肺炎と診断することは出来ないにも拘わらず)。

 

この様な「まがいものマイコプラズマ肺炎」が、どうして「マイコプラズマ肺炎」と言えるのでしょうか?


 上記のように、生化学的に厳格な基準に合致する正当な検査結果のみを拾い出して、今回の集計を篩にかけ直したら、おそらく、マイコプラズマ肺炎の統計学的に正当な「真の実数」は、発表された数の20%〜30%程度に激減するに違いありません。

 従って、今回(だけに限りませんが)の厚労省集計のマイコプラズマ肺炎の発生数に対する統計学的信頼性は、最大限好意的に評価しても高々30%程度しかない、と言う論理的結論が導出されます。


  以上の様な統計学的実数しか得られないのに、どうして、「マイコプラズマ肺炎」が流行していると言えるのでしょうか?


換言すれば、現在の「肺炎」の原因としての大多数は、マイコプラズマ以外の病原体によるものであり、マイコプラズマ肺炎は例年通り、単なる小流行に留まっているに過ぎないと言う不可避的・論理的結論が導出されるのです。


 この様な信頼性の極めて乏しい根拠しか存在しない事象に絶対的価値を付与しつつ、大騒ぎする非論理的態度こそが、日本だけで年中行事のように繰り返される「ワクチンの副作用(副反応の間違い)」事件等の根本原因となっているのは明らかであり、日本のマスコミや厚労省は非科学的だと欧米から揶揄されても仕方がありません(「またしても起きたワクチン…」の項参照)。

 

日本の常識は世界の非常識です。

 

 以上、彼らが論拠とするものは、極めて証拠能力の乏しいものに過ぎず、マイコプラズマ肺炎と結論づけることは、困難であることを完全に論破しました。

 

 次に、この肺炎が、マイコプラズマ肺炎ではない、他の感染症によるものであることを、臨床的証拠や現在までに明らかになっている医学的知見を基に検証して行きましょう。

 

 先ず、この肺炎で認められる臨床症状とその動態を列挙します。

 

  1. 初期症状が咽頭痛から始まり、視診上、軟口蓋に刷毛で描いた様な発赤部分、及び、もしくは、点在する発赤部分を認める。
  2. 咽頭痛に次いで数日後から咳嗽が始まり、次第に増強する。この病日頃から、同時に鼻汁、鼻閉も著明に認める。
  3. この段階で適切な内服薬の選択や治療を開始しないと、重症気管支炎、または、肺炎の状態に陥ることがしばしばであり、気管支喘息の既往を有する者は、ほぼ必発症状として同時に気管支喘息発作症状が発現する。
  4. 発症年齢は、1歳以上から成人まで幅広く認められる。1歳以下には、アトピー体質、即ち、気管支喘息体質を有する児以外には殆ど発症が認められない。
  5. マイコプラズマ肺炎既感染者にも発症が観られる。しかも、特に幼児においては、数週間単位で繰り返し感染・発症を来す傾向を認める。
  6. 下痢、腹痛などの急性胃腸炎症状を伴うことがしばしばである。また、眼球結膜炎も高頻度に認める。
  7. セフェム系抗生剤(フロモックス、メイアクト等)が無効であるのは勿論、通常マイコプラズマ肺炎を含む呼吸器感染症に極めて有効であるニューキノロン系抗生剤(クラビット、オゼックス、アベロックス、ジェニナック等)が全く奏効しない。
  8. ところが、マクロライド系抗生剤のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド等)のみは、著明に奏功し、治療開始から4日ほどで著明に改善し、1週間〜2週間で寛解治癒に至る。
  9. 真の喘息治療薬であるトシル酸スプラタスト(アイピーディ)をクラリスロマイシンと併用した場合、更に改善度の増強、および、改善までの期間の短縮化が認められ、特に気管支喘息症状を併発している者に対しては、喘息発作の改善のため、その使用は不可欠的である。

 

 以上の様に、いずれの項目も、もし、この疾患がマイコプラズマ肺炎だとしたら、冒頭に述べたマイコプラズマ肺炎の概要と照らし併ると、9以外は全く説明の付かない、矛盾する事項ばかりなのです。

 更には、上述のPA法による検査結果で、1280倍以上の結果を得て、マイコプラズマ肺炎と診断されている症例においても、上記の1〜9の項目のいずれか、あるいは、全てを確認し得る場合が殆どであり、この様な症例の原因をマイコプラズマ肺炎単独に求めるには無理があることは明らかであります。

 これらの厳然たる事実に対して、素人のマスコミ諸氏はさておき、専門家たるべき浅はかな臨床医家たちは、どう答えるおつもりなのでしょうか?

 もし、全てを例外だという答えで逃げようとするなら、もはや何をか況んやです。何となれば、統計学的に、例外と認められ、棄却できる事項は高々5%未満だからです。換言すれば、殆ど全症例に当てはまるような事象は、統計学的に無視できない真の事象に他ならず、それらを「例外である」とするのは、不可能であり、この様な強弁は自然科学の法則に反する行為、即ち、非論理的(もはや科学ではなく占星術や宗教の様なもの)強弁と断じざるを得ません

 

 では、一体、真犯人、即ち、この肺炎の原因となっている病原体は何者なのでしょうか?

 

 答えは、上記の項目を全ての医学的知見を踏まえて熟慮すれば明らかです。

 

真犯人は、Adeno Virus Type 7 and/or Human Meta Pneumo Virus

アデノウィルス7型及びもしくはヒトメタニューモウィルスです。

 

 

 Adeno Virus Type 7は、アデノウィルスの一つの型であり、アデノウィルス自体は感染症の中でも非常にありふれてはいるが、重要なものの一つです。

 

 アデノウイルスは、1953年にアデノイド(扁桃)組織から分離同定されたDNAウイルスの一種です。21世紀初頭までに既に51種類の血清型が分離同定されていましたが、これに加えて、アデノウィルスに対する全ゲノム配列の同定により、2010年新たに52、53、54型の存在も確認されました。これら全54種類の内、ヒトに対して病原性を有するものは、少なくとも30種類以上存在することが確認されています。

 これらの多種類に及ぶアデノウィルスの極めて特異的な性質は、型により様々な病態を呈すると言うことです。例えば、最も有名なプール熱(咽頭結膜熱)は、主として、1、2、3、4、6型が原因となっており、流行性角結膜炎(眼球の角膜と結膜の両者が侵襲を受ける)は、主として8型で、出血性膀胱炎(突然血尿を来す疾患)は、11型。更には、急性胃腸炎は40、41型と、各々の型によって全く異なる病態を示すのです。これらの型による様々な疾患に加え、重症肺炎型と呼ばれるタイプがあり、これが、Adeno Virus Type 7なのです。7型は、近年では1995〜1998年まで全国で大流行し、死亡例や回復した後も後遺症の残る症例が続出しました。2000年以降は、毎年大流行する傾向は認められなくなった様ですが、それでも尚、局地的、あるいは、季節的な流行が散発的に認められ、中でも2003年はかなり流行し、この年もマイコプラズマ肺炎(または異型肺炎)と暫定的診断を成された肺炎が流行し、その多くがAdeno Virus Type 7による肺炎であったことが、後の疫学的調査により判明しています。

 インフルエンザにも周期的流行性が認められるのと同様、このAdeno Virus Type 7にも周期的流行性が存在するものと考えられます。何故ならば、上記の様に、1995〜1998年と、2003年、そして、今回の2011年の周期的流行性が認められることが明らかであり、かなり高い確率で5〜8年周期性であることが推測されます。但し、実際に、これを証明するためには、十分な疫学調査が必要であり、今後の調査検討が待たれるところですが、それにより仮説通りの結果が得られるものと確信しています。

 

 Adeno Virus Type 7による肺炎の症状は、上記1〜6に述べた様相を呈します。即ち、上気道炎症状から始まり、次第に気管支炎、さらには、肺炎に至ると言う病相過程を必ず呈します。この様な病相過程は、例え生物学的多様性を考慮しても、病態生理学的に、マイコプラズマ肺炎では決して起こり得ない事象です。特に、上記の病相6は、マイコプラズマ肺炎では全く説明できない病相であり、Adeno Virus Type 7特有の症状と断言しても差し支えありません。何故ならば、7型はアデノウィルスの他の型、即ち、1、2、3、4、6型や40、41型とほぼ同等の性質をも有しているため、咽頭結膜熱や急性胃腸炎の症状を呈することもしばしばであり、実際、咽頭結膜熱や急性胃腸炎のみの症状を呈した症例から7型が検出されることも頻繁に認められています。

Adeno Virus Type 7が他のアデノウィルスと異なって重症化し易い理由は、Adeno Virus Type 7の発症転機に求められます。即ち、その宿主での増殖過程において、このウィルスが、生体細胞や組織に直接侵入して、その中で増殖して障害をもたらして(一部のAdeno Virus Type 7はこの増殖過程も取る)発症・重症化につながるわけではなく、むしろ、生体における免疫・アレルギー体系の中で基点的役割を担うTh1-Th2リンパ球系と、そこから産生されるサイトカインに対して、直接的および間接的障害をもたらし(特に、サイトカインの遺伝子配列(アミノ酸1次構造)の特異点的変異Point Mutationすら引き起こすことが近年明らかになっています)、その結果、サイトカインストーム(生体にとって有害作用をもたらすほどサイトカイン産生を増幅させる現象)を引き起こすこと、即ち、生体側の過剰免疫応答を引き起こすことが、重症化に繫がっているからであると、既に幾つかの研究報告からも明らかとなっています(冒頭の脚注参照、および、アレルギー性疾患等の項目参照)。この様な、発症転機をとるウィルスや病原体は幾つも存在し、この後述べるHuman Meta Pneumo VirusRS Virusも、その代表的存在の一つであり、また、マイコプラズマ肺炎もほぼ同様の発症転機を取ることが明らかとなっています(冒頭の脚注参照)。

 換言すれば、マイコプラズマ感染症においても、その感染が重症化、即ち、肺炎に至る過程は、マイコプラズマそのものが生体の組織障害を起こした結果ではなく、生体側の過剰免疫応答によるものであることが、幾多の証拠から明らかとなりつつあると言うことです。従って、浅はかな臨床医家たちによる「今回の偽マイコプラズマ肺炎大流行」の主原因を、「マイコプラズマの耐性菌化によるものだ」とする主張も、全く無意味かつ稚拙な非科学的暴論であると断じざるを得ません。何故ならば、耐性化していようが、いまいが、そのことがマイコプラズマ感染症が肺炎に至る病態生理学的過程には全く無関係であることは勿論、治療に関しても、治療の本質は病原体を薬剤によって排除することではなく、宿主の過剰免疫応答を抑制し正常化させることであるからです。従って、抗生剤が病状の改善に供しない(奏功しない)事もマイコプラズマが耐性化したためではなく、病原体侵入による宿主の過剰免疫応答を抑制することに失敗しているからなのは、言うまでもありません。

 また、今回の偽マイコプラズマ肺炎が、マイコプラズマ感染症既感染者に対して成立していたり、あるいは、短期間に何度も繰り返して同症を発症している理由を、浅はかな臨床医家たちは、「マイコプラズマの耐性菌化によるものだ」と、性懲りもなく主張しているようですが、NHKが、成人にもRSウィルス感染症により重症化していると主張する(後述)のと同じくらい、まさしく噴飯ものの素人による恥ずべき非科学的な議論だと断じざるを得ません。もし、その主張が正しければ、貴方たち浅はかな臨床医家たち、特に、小児科医たちは、今頃、大量に重症肺炎に至り、各地の病院は患者化した彼等が占拠してパニックに陥っているはずです。正解は、上記に述べたとおり、耐性化は一切無関係で、宿主の過剰免疫応答によるものであるから、貴方たち浅はかな臨床医家たちは、今回の偽マイコプラズマ肺炎にならないのです。

 

 アデノウィルスを検出する臨床検査法には、現在、3つの方法がありますが、いずれも一長一短で、マイコプラズマ感染症における臨床検査法と同様、かなりの問題点を内在しています。

まず、(1)ウィルス分離法。これは、咽頭ぬぐい液、喀痰、胸水、糞便等の検体から直接アデノウィルスを分離抽出する方法です。しかし、この検査は、保険適応が認められておらず、高費用な上に、検出までに1〜数週間を要するため、現実的ではありません。(2)血清抗体診断法中和抗体を測定するこの方法を用いれば、アデノウィルスの型判別も可能であり、比較的信頼性の高い検査法です。但し、マイコプラズマ感染症における検査法で述べた様に、中和抗体、即ち、IgGは急性期終わり頃になり漸く出現する抗体であるため、急性期診断に有用であるとは言えません。(3)迅速検査キット。2004年頃から導入された、免疫クロマトグラフィー法による測定法です。操作が簡便な上に、10分程度で反応が得られるもので、アデノウィルスか否かを判別するためには、極めて有用です。但し、型判別は不可能であり、更には、キットの感度自体が70%程度と偽陰性(本来陽性なのに陰性という結果が出てしまうこと)率が無視できないくらい高く、しかも、咽頭を擦過して検体採取する際、擦過が不十分であると更に感度が40%程度にまで低下すると言う、やや致命的とも言える難点があります現在、日本で事実上実行可能なアデノウィルスに対する臨床検査法は、以上の3つであります。上記で明かな様に、いずれの検査法も、臨床の現場で急性期診断、しかも、型判別まで行いたいという要求を満たすものではなく、診断補助として、決して高評価を与えることは出来ないものばかりです。現在、欧米で一般化されつつあるPCR法(各々のウィルスに特異的なDNA配列を拾い出し、それを増幅して検出する検査法。現在、日本では厚労省の指定する定点観測機関のみで行われています)が普及すれば、状況は変わりますが。見通しは余り期待できません。

 以上の様に考察すれば、アデノウィルスに対する診断は、病態生理学、生化学、薬理学等の修得、研鑽を生涯日々怠らない様にした上で、常にその時々の感染症の流行状況を正確に把握し、患者さんに対しての、問診、視診、聴診を充分に行うという、古典的な診察法こそが診断の決め手になると言う結論になります。この様な古典的診断法こそ、現在の臨床医家たちは軽視しがちなのですが、検査のみで診断を下すより遙かに正確である場合が、往々にしてあるということを、今一度再評価すべきなのです。何故なら、ここまでで述べてきた様に、臨床検査は時として嘘をつく、あるいは、検査結果に対しての判定者が真実を見据えていない場合が、現在の日本では余りにも多いからです。

 生化学的臨床検査法は、確かに有用であり、確定診断の決め手となることもしばしばではあります。しかしながら、今回のマイコプラズマ肺炎におけるIC法やPA法の様に、あるいは、上述のアデノウィルスに対する検査法の場合なども同様に、それ単独だけでは判定(確定診断)が困難または不可能である検査も、一方では数多く存在することも又事実です。

 従って、ある疾患に対して臨床生化学検査を行う場合、その検査が一体どういう原理に基づいていて、何を測定しているものなのかを、正確に把握しておく事は絶対必要条件なのです。さらには、その検査によって得られる結果の評価判定が、生化学的、統計学的に真に有意であるか否かも考慮すべきなのです。何故なら、臨床検査によって得られるデータも、科学的データである以上、その解釈判定に際しては、データと対照群との統計学的比較検討を行うことで初めて必要十分条件となり得るからです。

                                                                                                                                                 

   薬理学や生化学を含めた科学においては、この様にして、得られたデータの解釈を行うことが必須であり、それでこそ、科学と言えるのです。ところが、残念ながら、臨床医学はしばしばこの様な検証を怠りがちであり、「臨床医学は科学ではなく錬金術」だと、基礎医学者から揶揄される由縁となっています。換言すれば、この様にして真に科学的に正当であるかどうかの判定過程を経ない結論は何の意味もない、科学以前の錬金術師的結論に過ぎないのです。

 Adeno Virus Type 7に対する治療法は、この後述べるHuman Meta Pneumo Virus(HMPV)RS Virus(RSV)感染症に対する治療法とほぼ同一のため、まとめて後述します。

 

 ヒトメタニューモウィルスHMPVは、2001年に初めて分離発見されたウィルスで、ウィルスの分類学上、パラミクソウィルス科(Family Paramyxoviridae)、ニューモウィルス亜科(Subfamily Pneumovirinae)に分類され、RSウィルスRSVも同じ分類上に属する(前者がメタニューモウィルス属で、後者がニューモウィルス属に更に枝分かれする)ウィルスです。両者は、この様に非常に近縁関係にあるため、感染成立によって引き起こされる臨床像も非常によく似ています。即ち、軽度の咽頭痛に始まり、鼻汁、鼻閉症状に次いで、咳嗽が始まり、次第に咳嗽が増強して行くと言う、上気道から気管支炎への病相移行が両者共に見られますさらに病相が増悪すると下気道炎(肺炎や細気管支炎)に進展し、高熱の持続、呼吸困難症状を伴う頑迷な咳嗽、および、気管支喘息発作症状の発現も高率に認められる様になります最悪の転帰の場合、死に至る場合すら有ります

 両者の決定的相違点は、HMPVの方は、通常生後6ヶ月以降にしか発症が見られないのに対し、RSVは、逆に生直後から発症が見られ、通常1歳半以上では発症が見られず、それ以降の年齢層では、軽度の上気道炎症状しか認めないと言う点にあります。これは、HMPVに対しての移行抗体(胎盤を通じて母親から胎児へ移行する抗体)の消失し始める時期が、生後6ヶ月頃であることと見事に一致することからも明らかな様に、生後6ヶ月までは移行抗体による感染防御が有効であるため、HMPV感染が成立しないからだと考えられます。逆にRSVの移行抗体は微弱又は皆無であることが確認されており、このため、RSVは生直後からも感染成立しうるのです。

 HMPVは、2歳までに約50%、10歳までにはほぼ全員が感染すると言うことが明らかになっており、一方のRS Virusは、2歳までにほぼ全員が数回以上感染していることが明らかとなっています。両者共に繰り返し感染することが特徴でもあり、数回以上感染して初めて強い中和抗体が出来ることも明らかとなっています。中和抗体が出来れば、以降は感染しても軽度の上気道炎症状、即ち、鼻汁と軽度の咳嗽程度の症状発現に終わることになります。換言すれば、1歳半以上、特に、2歳以上のRSV感染においては、治療を要するほどの症状発現を認めることは、病態生理学上においても、疫学上においても、殆どあり得ないということが、これにより明確に示されます。従って、NHKの主張する2歳以上の「RSウィルス肺炎」は、正しく噴飯ものであり、地球上には、この様な奇異な疾患はまず存在しません

 両者共に、気管支喘息発作症状の発現を認めることが多い原因は、Adeno Virus Type 7の項で述べた様に、両者共に、生体における免疫・アレルギー体系の中で基点的役割を担うTh1-Th2リンパ球系と、そこから産生されるサイトカインに対して、直接的および間接的障害をもたらす(特に、サイトカインの遺伝子配列(アミノ酸1次構造)の特異点的変異Point Mutationすら引き起こすことによることが、ほぼ明らかになった)ことから説明できます。即ち、当ホームページの気管支喘息の項等で繰り返し述べている様に、Th1-Th2リンパ球系の障害は、即、気管支喘息発作症状の発現に繋がるからに他なりません

 また、Adeno Virus Type 7と共に、両者の特筆すべき点は、他のウィルスやマイコプラズマ等と多重感染を起こすことです:例えば、HMPVとRSV、あるいは、HMPV とAdeno Virus Type 7の様な同時多重感染のことこの傾向は、HMPVと他のウィルスの組み合わせの場合に特に高頻度に認められます。さらに、HMPVは呼吸器症状に加えて、中耳炎や下痢などの急性胃腸炎症状を伴うことも高頻度に認められます

 

以上の様な両ウィルス感染症の概要を熟考し、さらに今回の「肺炎」の臨床症状(上記の1〜6)とを照らし合わせると、結論として、「マイコプラズマ肺炎又はRSV」ではなく、Adeno Virus Type 7 and/or Human Meta Pneumo Virusであることは、否定できない事実と言わざるを得ないのです。

 HMPVを検出する臨床検査法には、現在、アデノウィルス感染症における臨床検査法と全く同一のウィルス分離法とReal-Time PCR法の2つの方法しかなく、上記で述べた様に、いずれも現実的な検査法とは言い難いものでしかありません。一方のRSVに対しては、マイコプラズマ肺炎迅速検査法と同様なイムノクロマト法によるRSV抗原に対する迅速検査法があり、こちらの信頼度は抗原を測定するため100%近いものと考えて良く、この検査で陽性反応を認めれば、少なくともRSV感染症は存在すると考えて差し支えありません(但し、上記の様に多重感染ウィルスの存在は否定できない)。いずれにしても、検査を過信すると思わぬ落とし穴にはまることは、他の場合と同様です。

 治療については、マイコプラズマ肺炎をも含めて、ほぼ同一の治療により、改善治癒に至らしめます。即ち、上記7〜9に記載した通りの内服薬、クラリスロマイシンとアイピーディを中心とした投薬を行えば、1〜2週間で寛解治癒に持ち込めます。これに関する薬理学的説明は、簡単にできますが、敢えて詳述することは控えたいと思います(この項の各所に答えを散りばめてあります)。薬理学と病態生理学に精通すれば、他の項も含めてこれまでに述べてきたことから自明の理であり、この項だけを読んできた不勉強かつ浅はかな臨床医家の諸氏にとっては大いに不満足でしょうが、彼らに反省を促し、軽率なマスコミやしたたかな官僚の妄言に惑わされずに真実を看破する眼力を養うべく、自らの頭を使って基礎から勉強し直す態度を身につけさせるためにも、敢えて述べないことにします。何故ならば、不勉強かつ浅はかな臨床医家に覚醒してもらわなければ、日本の医療は早晩崩壊の日を迎えるに違いないからです。

 

 ところで、この原稿を執筆している11月現在、NHKは未だに性懲りもなく、「マイコプラズマ肺炎大流行」と言う、誤報道を異常なまでに執拗に繰り返しています。しかし、一方で、この様な医療に関する話題にいち早く関心を示し、率先して誤報道を展開するはずの日本の3大有力新聞が、極めて不思議なことに、この話題に一切触れず、今回は何故か沈黙を守り通し続けているのです。これは一体どういうことでしょうか?この様な奇異な現象を観察すると、何者かの意思によって情報操作が行われているのではと、つい考えてしまいます。単なる、私だけの思い過ごしで有ればよいのですが。

 

以上、要約すれば、総合的に考慮して、今回の肺炎の殆どの真犯人は、マイコプラズマ肺炎やRSウィルス感染症ではなく、アデノウィルス7型、およびもしくは、ヒトメタニューモウィルス感染症と結論づけすることこそ正当な科学的結論なのです。

 

繰り返しになりますが、重要なのは、日本人一人一人(マスコミ諸氏や一部の医師も勿論含む)が、「このままでは世界から取り残される」という危機感を今すぐ覚えるべきだと、私は考えます。